ICT利用の次世代型徘徊者捜索トライアル 第2弾実施のまとめ

2050年の日本の人口形態を持つといわれている肝付町では、2017年10月1日現在高齢化率39.1%で超高齢社会となっている。
厚生労働省研究班による推計では、高齢になるほど認知症の割合が増えていく傾向が示されている。

出典:NPO法人認知症ラボ(http://dementia.or.jp/document/)

 

認知症の特徴の一つとして、徘徊という行動が起こり、それが原因で行方不明という事態になることがある。
肝付町では、2010年から町と肝付町社会福祉協議会などが中心となり、認知症になっても安心して住めるまちづくりを目指して徘徊模擬訓練を継続実施し、2016年12月1日に初めて情報通信技術(ICT)を取り入れ、関係者だけによるトライアルを行った。
今回(2017年3月25日)は第2弾として、ウォ-キング大会イベントの一環に一般住民の参加を募り、訓練活動の幅を広げていくことを視野に置いた。
当日は、朝から雨の天気ではあったが約160名の参加があり、屋外組(25名)と屋内組とに分かれて体験していただいた。
今回実施した内容については、次のとおりであった。

【実施日時】
平成29年3月25日 9時から13時30分

【徘徊者捜索本部】
やぶさめ館内

【捜索範囲】
 エリア①・・下之門~池之園
 エリア②・・三反~下住
 エリア③・・本町~寺町
 エリア④・・丸岡~小牧
 エリア⑤・・東迫

徘徊模擬訓練エリア:鹿児島県肝属郡肝付町新富地区

【参加者】
  捜索人員数 25名(5名1組、5チ-ム)

【使用機器】
 ■ 株式会社 エー・ジェー・シー製品:DoKoアプリ
・ 徘徊役1名にハイビ-コン(送信機)1個を持たせて、エリア②からエリア③を歩き回ってもらった。
・ 捜索者のiPhoneにDoKoアプリをインスト-ル
 ■ 株式会社LiveRidge製品:LiveAir
・ LoRaWANという免許不要のサブギガ帯域である920MHzを使用
・ 受信基地局(ゲートウェイ)を2か所(憩の家屋上、歴史民俗資料館2階)設置
・ 捜索者のスマホ等に、徘徊者役の位置情報をインターネットから閲覧できるように事前登録。
・ 徘徊役5名に、送信機5個を持たせる。

【実施方法と結果】

捜索チ-ム 徘徊者捜索
開始時間
徘徊者
発見時間
捜索エリア
A-1
A-2
10時52分
10時56分
11時25分
11時22分
エリア②
B-1 記録なし 10時48分 エリア①
C-1
C-2
10時42分
11時00分
10時50分
11時36分
エリア⑤
D-1
D-2
10時44分
10時24分
記録なし
11時29分
エリア④
E-1 11時03分 11時18分 エリア③

・徘徊者が、自身の近くを捜索している捜索者に思わずよっていったケースがあったが、その他は全員発見できた。
・捜索開始から発見までの時間は、最短で8分、最長で65分であった。人的のみの捜索方法からは比較にならないほどの短い時間で発見できた。
・発見に65分かかった徘徊者は、捜索者が近くを何度か通ったが、町道から外れた木々の間に隠れていて、発見が遅れてしまった。

 

徘徊模擬訓練に係る写真記録
使用した機器
DoKoアプリ ホ-ム画面
DoKoアプリ 捜索画面
LiveAir 捜索画面
 
捜索本部

(やぶさめ館)

捜索状況の情報収集の様子
捜索地図
徘徊者と

捜索の様子

徘徊者の様子①
徘徊者の様子②
徘徊者の様子③
捜索の様子

 

発見後の様子

 

【関係者の声】

・細い道に行ったとき、その道が地図に表示されなくて戸惑った。
・捜索者と徘徊者の位置関係が地図上でわかると、もっと探しやすい。
・ビ-コンについては、”なかなか反応しなかった・使い方が難しく感じた” との意見があったが、普及させていきたいとのことであった。
・徘徊役をされた方の中には、誰も声をかけてくれなかったという声と通りがかりの人が「おはんは誰け?」と近づいてきてくれた人がいたりと、町民の対応が分かれていた。
・今回、ICTを取り入れた訓練だったが、今後もこれを続けていけたらと思う。
・(開発者から)住民の方と一緒になって実証するという機会はなかなかないので大変ありがたかった。
・個人が抱える課題は、一つの面だけで解決するものでなく、いろんな分野の人たちと多面的に解決していかなければならないなと感じた。同様に、地域課題の解決も多くの人が協働で取り組む環境が必要だなと思った。

 

【まとめ】
肝付町における高齢化と人口減少は、これからの暮らしや働き方に様々な課題を引き起こしてくることが考えられ、それに対応していかなければならなくなるであろう。
情報通信技術(ICT)は、そんな課題を解決していく手段の一つではあるが、その可能性は大きなものが期待される。
今回、肝付町でトライしたことの収穫は、これまでの人的捜索訓練の経験があったからこそICTの必要性を深く考えさせられ、まだまだ現場にあったものに改善していく余地があると気づかされたことであった。
このように技術者たちと実際に現場で使う人たちが、実証フィ-ルドでの試行錯誤を行いながら共創していくことで、よりよい使い勝手の良い製品が生み出されていくのではないだろうか。